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【週中応援再掲】Save Yourself I'll Hold Them Back

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苦しい時期が続きます。

各国での 病気や災害

認識し、配慮して  

私達は 日常を正しく過ごしたい。



「静かになったな… 喘ぎ声 うるせーし。。。。。」

包帯グルグル巻きのパピ
言い過ぎじゃなくて。ミイラ男みたいな感じ 伝わる?

「確かに、 一晩中聞こえるよね。起きたの? 気を失うように眠るから 僕は気が気がじゃないよ。」

「痛み止めが効くんだよ。常にねむい....激痛に悩まされないだけ何倍もいい。」

何時だろうね。昼も夜も解らない。
シントーとクリスに連れてこられた時は明るかった。
あれから数日 このアナグラで過ごしているが、時間の感覚は掴めない。

「パピ 、何か少し食べる?」

クラッカーの工場から飛び散った砕けたクラッカー

消費期限は来年まで持つ腐った菓子パン

飲水は汚染チェックでOKなら飲める。

「Gun、お前が食べろ。俺は減ってない。」

水だけでも飲んでと。コップを渡す。

利き腕じゃないから 上手く持てるか解らないけれど、なるべくパピの自尊心を尊重する。

あの日 感情は爆発した。大爆発だ。頭がおかしくなるかと思った。
だってさ、パピの右腕はどこにも見当たらないんだもん。あの綺麗な指は二度と掴めない。
泣きじゃくる僕に身体ごとぶつけて言ったんだ。

「腕なんか無くたって、お前を愛せる。」

お前が身切れなくて 良かったって。

涙で見えなくて良かった。生々しい傷痕を見たら 気が狂ったかもしれない。
シントーとクリスがどこで覚えたのか、適切に処置した。見よう見まねだし、消毒なんて家庭の医学程度だよと言っていたけど、パピの痛みを軽くしようと懸命に治療した。

「けど、、、、」

「何?」

「お前を食べたい。」

「.....治ったらね」

「アララ〜、、、、赤くなってる。」

「パピの変態!でも 、、、、、僕も愛されたいよ。」

「ああ.....そうだな いっぱい愛し合おう。」

僕達の部屋は、アナグラの入口から見て、左。

中央には更に下へ降りる階段がある。キッチンやリビングは、下の階。トイレとバスルームが右隣にあって、その隣が、小さな倉庫を挟んで 新婚のSKの部屋。

円形の造りだ。
壁は薄い。
だから、彼らの愛し合う声は聞こえてくる。
今までは、押さえる必要もなかっただろうけどね。正直どうしたって、そういうの聞こえると、昂るよね。
それはパピも同じみたい。でも今はまだ安静にしてなくちゃならない。だから僕達は 、寝床を別にして休む。
パピの家で暮らしていた時のことを思い出す。僕達もSKのように、隙間なく暮らしたよ。
僕達もまた、たくさん繋がった。幸せな時間だ。パピをいつもよりも全身で感じられるんだもん。離れ難いよね。

「なあ、、、 やっぱりアイツら天使なんじゃない?」

「僕達を救ってくれたもんね 。天使だよ。」

「いや、比喩じゃなくてさ、この地球は天秤座の生まれって噂じゃん。クリスも天秤座だ。」

シントーは ライオンだし。パピは、右肩を擦りながら言う。

「いつか見たドラマにあったね。だったらクリスは大天使だね。」

「ああ、地球が出来て7日目に、獰猛な獣に出会ったんだ。そこで恋に落ちたのさ。」

「その獰猛な獣を殺すために 知識をえた人間を排除したかったのは、 本当はアダムとイブをそそのかしたヘビじゃなくて 天使の思惑だったんじゃないのかって?」

対峙して気付いたんだ。それが愛に成ることを。

「万物の生命は尊いものだと知った瞬間だ。」

顔を歪めて 目を瞑るパピ。

痛みが戻った.....。 薬が切れかけてる。 天使を呼ばなくちゃ。

「待ってて 。」

「Gun、邪魔すんな、、、平気だ。」

「駄目!!消毒だってしなくちゃ.... 僕じゃ無理だもん。。。。。」

「ぶっかけて 縛っときゃ治るって。」

注射なんて できない。でも、、、、パピの痛みを取るためなら 僕がやらなくちゃ…...。

「ぴがん、任せて。ぴしんが上手くやる。」

包帯は僕が得意なんだからと ウインクする。

「二人とも。。。。。コートー.....」

「悪いな、疲れて寝てたのにな。」

シントーは気だる気な様子で、注射器に薬剤を注入し、パピのベッドのそばに跪く。

「ぴおふ、僕達のように、セックスしたいなら、早く治すことですね。」

シントーってこんなキャラだったかな? 手際よく済ませる。

「ぴしん 包帯巻くの下手なんだよ。僕を縛るのも下手!」

べーっと舌を出し、キット!と怒ったような声を出し、笑いながら じゃれ合う二人。
処置が終わってからにしてよねえ。。。。。

「ねえ 僕にも手伝えることある? 」

「あるよ、ぴおふを支えること。」

「処置の仕方も教えて欲しい。」

「教えますよ。それに.....ぴがん」

クリスはシントーの頬にキスをし、汚れた包帯を片付ける。

「何? シントー.....」

「あなたの怪我も完治させなくちゃ。だから今は、ぴおふの傍に居てあげること。」

それくらいかな?と微笑む。

クリスは、水の入ったコップを左手に、錠剤を口の中に落とした。

速効性のある痛み止めは とても強力で、パピの体はたちまち ベッドへ沈み込む。

「Gun、お前も休め。少し眠るから。。。。。」

目は閉じられ、軽い寝息を立て始める。

「眠ったね。 ぴがんも眠る?」

クリスはシントーの隣に座り、肩に凭れる。

「いや、本でも読むよ。」

「そう、、、、じゃあ僕達はもう少し眠ります。」

シントーはクリスの髪に口付けて、抱き上げる。

2人の指には、結婚指輪。

僕はあの日 指輪を失った。
パピの指輪も腕ごと無くなった。
灰の中をがむしゃらに探したけど、見つからなかった。
パピが回復したら、失くしたことを謝りたい。

「うん、 おやすみ。ありがとうね。」

クリスを抱き抱え、バスルームへと歩く。
たった数歩の距離だけど とてもゆっくりと進む。

「あ、そうだ  パピが次に気がついたら 渡すものがあるから 楽しみにしててね。」

クリスがシントーの肩越しに言う。

バスルームのドアを開き、中へと消えていく。

パピをお風呂 入れてあげたいな。
体力つけなくちゃな。

手のひらを見つめ、自分の中に残る生きる情熱を確かめる。きっとまだ僕は頑張れる。
パピと共に生きるって 心に決められる。
再開した時、パピの言った一言で既に心は決まっている。
僕に凭れていいよ。
僕に背中を預けてよ。
小さいけれど、頼りないかもしれないけど、しっかり支えるから。
とても弱弱しい スタートになるだろうけど、生の喜びを噛み締め、決心を固めよう。

手を握り、頬をコツンコツンと叩き、顔を上げる。

バスルームの扉が開き、上半身裸のシントーが覗く。

「ノーン どうしたの?」

痩せた体だったけど、少し着いた筋肉が色っぽい。
目を逸らすと、声がかかる。

「ぴがん、混ざる? 3人でする?」


僕は慌てて、パピの元へ逃げ帰った。




終。











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