「キット 洗濯してるの?」
「うん 泊まるだろ? 明日の撮影ならここから行けばいい。」
解った、マネージャーに連絡すると、いつものバックパックからスマホを取り出す。
僕の机の上には、自分のラップトップと、数冊の本が置かれている。
大学の課題でもやってたのだろう。
風呂の時間は十分に長かったからね。
「いいって。 でも10時に迎えに来るから、キットも一緒にね。」
「メーに連絡しなくちゃ。」
ベッドサイドに置いていた、スマホを取りに、ベッドに上がると、
兄さんは、僕の腕を掴み、体ごとベッドに押し付ける。
「メーには連絡済み。必ず、クリスを遅刻させるなって。」
まあね、兄さんが居れば遅刻なんてしないだろうけど・・・・・
髪を拭いたタオルが、頭の下に敷きこまれ ヒンヤリと冷たい
両腕は、シントーに押し付けられ 乱れたローブも正せぬまま・・・・・
「クリス、少し遊ぶ?」
「宿題は?」
「大体済んだ。 遊ぶ? キス? それとも セックス?」
近づく 端正な顔
顔を背け
「どれもしない」
言い放つと、近づく顔は どうして?という疑問を湛える
「兄さんが傍にいるだけでいい。」
僕にその気がないのが解ると、押さえつけていた、手を緩め
代わりに、額に軽いキスをくれる。
「僕は したい 全部。」
でも、、、クリスを大事にしたいと
空いている 僕の左に寝転ぶ。
「言ってることと、やってることが 矛盾してるよ シング・・・・」
僕を手放した両手は、シャツを一気にまくり、上半身を露わにする。
「熱くなった。 風呂上がりのお前見て、静観できるほど タフじゃないよ。」
「そんな顔してないけど? ったく、、、 兄さんには敵わないな・・・・・」
僕は なんでこの人を好きになったんだろう。。。。。
ただ単に、年齢や、大学で 近しかったから?
正反対の性格に 容姿に魅かれたから?
叶わない想いなら 早く捨ててしまいたいのに
僕は いつまでもこの人にほだされるばかり。
涼しい顔で、口の端を僅かに上げて、右の僕をじっと見る。
いつまでも慣れない、心の中を見透かすような視線
いつの間にか、唇を噛んでいたのだろう
シントーは、駄目だよと 優しく指でなぞる。
「そういうの しなくていいから。」
ローブを脱ぎ、スウェットに着替える。
いつもなら 裸でいるところだけど
兄さんの前では そうもいかない
「キット、何したい?」
「兄さんは、宿題を片付けてしまったら?」
電源の入ったままの、ラップトップを指さす
シングは、バタンと画面を閉じ、僕の隣に戻る。
「片付いた。」
エアコンの温度を下げて、ニッコリと微笑む。
「キット 抱いていい?」
胸が ドキンと波打つ。
「面白いね 兄さん。何年もやり続けてる宿題 今日に限って 速攻で終わらせるなんて。」
「いい?」
「ダメ。」
アゥ¡と呟き 困った顔をする。
やめてよ 本当に。
「じゃあ キス。」
「ダメ。」
ここ最近 キスで止まった試しがない。
「クリスには 触れちゃ駄目ってこと?」
「今は・・・・・ダメ。」
不機嫌そうに 口をすぼめるシントー
本当は 駄目ではないけれど、、、、、
体だけの会話はしたくはない。
「シング、僕が好き?」
「好きに決まってる。」
「じゃあ ダメ。」
好きなら ダメ。
「何が どういう風に 駄目なの?」
「僕の傍に居なきゃダメ。」
こんなに傍にいるのに? と 抱き寄せる
「そんなのじゃ ダメ。」
足りない ダメ。
「離れて 行くのは 許さない ダメだ。」
貴方の夢を摘む気などない。
僕の心は 不安定だ。
揺れ動くなんて生易しいものではない。
兄さんが参加できない仕事などしたくはない。
どれだけ 僕が 根回ししているかなんて 考えたことなどないだろうね あの人は。
ダメ 嫌だ。
どこでもいい
たったほんの少し 指の先だけでも
貴方に触れて 安心したい
我儘だと 解っていても
「行くな シントー・・・・・」
そっとシングの胸に頭を乗せて、か細く呟く。
「可愛いね キット。 お前の言うことなら なんだってアリだ。」
兄さんにしかできないこと
僕の領域に踏み込める 唯一の人。
「じゃあ・・・・・」
「時間をくれる?」
「ダメ 長くは待てない。」
フフッと笑い 僕の頭を優しく撫でる。
「今日だけで 何度 ダメだと言ってるかな。」
「何度だって言う。 聞きたい言葉が聞けるまで 何度でも・・・・・」
シントーの盛り上がった胸に口づける。
短く 音を立てて
「もう ダメって言うのなし。 これ以上は我慢ならないよ・・・・・」
誰か ほんの少しでいい 解って
こんな兄さんを 誰が遠くに行かせたいと思う?
僕が ダメだと言う気持ち 少しでいい 解って
頭の先からつま先まで 愛おしく
愛してくれる人なんて
シントー以外にはいないのだから。
ダメだと 漏らした口は
だらしなく開いたまま
吐息だけが シントーの耳に届いた。
終。
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