朝 昼 寝る前。。。。。
デリバリーのミルクは 料理以外で シントーが飲み干す。
僕はそんなに飲まないから必要ないんだけど 兄さんは、本数を倍にした。
1日置きに ドアの前に届いている。
「ぴしん そんなにミルク飲んでも おっぱい大きくならないよ?」
ミルクの口ひげをつけながら 美味しかったぁと満足げに微笑む。
「解ってるよ。甘くて 好きなんだ… ミルク工場が倒産しないうちは飲み続けたいけどね。」
まあね・・・・ そうだ 需要が供給を上回るまでは 無理だとしても、僕たちの住処では必要不可欠なものだ。
14章に突入するまでがどれくらいの時間がかかるかは判らないが、僕たちはここで 二人 暮らすことを決めたんだ。
誰も訪ねては来ない。単に、 来れないんだけどね。。。。。
僕たちだけを守る シェルター。
家族は 僕とシントーだけ。
外部との連絡は、便利なSNSだってある。
不自由な世の中ではないだろう。
孤立はしない。
父母とも友達とも 連絡は取り合える
では何故 家族と暮らさない?
シントーと暮らす意味は.....?
いつだって会えるんだろう?
僕は選んだ。
一番 好きな人と暮らす。
会いたいなら会いに行ける これまではね....
それができなくなる前に
僕達は 決断した。
ほかの誰とも会えなくなっても
二人離れるのは嫌だから
ずっと一緒に居ようって
この深い深い 地下へと潜った。
牛乳配達員が 鉄梯子を下りる音が近づく時間が 朝
シントーのお腹がなる時間が 昼
一通り 日々のことを済ませて 眠りに着くまで時間は数えない。
そんなお篭もり生活だ。
当初 シントーは僕と暮らすことを渋った。
僕に 家族が居るからだ。
自分にだって 居るくせに、すんなりと地下を選んだ。
家族と暮らすべきだ。
いつだって会える。
会いにいく。
心配しないで、、、、、僕のクリス。
だあれが、そんなシントーの言葉を信じるもんか
ものぐさな兄さんが 潜ってしまったら そうそう簡単には出てくるもんか。
僕が、訪れようとも 危険だからと拒否するに決まってる。
僕は長年兄さんを見てきた知識で、迅速に家族を説得し、シントーと暮らすまでこぎつけた。
急がなければ、章はどんどん過ぎ去っていく。
渋ってたら 僕達離れ離れになるよ!それでもいいの!?
シントーは 何も言わなかった。
ただかぶりを振って 降参した。
「 ぴしん、必要なものとかある?注文するよ?」
「そうだなあ。食料以外は特にないなあ.... 洋服も要らなければ、プロバイダの一様化が始まってからは、通信速度に関係なく好きな映画もドラマも見れる。音楽だってダウンロードの必要も無い。誰彼が構わず配信してる。変だよね、お金の心配も無いなんて、こんな世の中になるくらいなら 僕達はずっともっと以前からラクに暮らしていけたのにね、、、」
変なの〜と シントーは 重たい鉄の扉を開けて、届いたミルクを冷蔵室へと運ぶ。
「あ そうだ ドリアンチップス これは欠かせない。農場が機能してるうちは食べれるかな。 」
大量に頼んでよ。とパントリーから乾燥肉とチップスを抱えて、カウチに座る。
僕達 結婚しました。
2人で開設した SNSのページに 始まりの言葉の代わりに載せた。
これからは 2人でなんでもやる。
役者は廃業だ。フリーランスの地下配信者だ。
日常の様子も ラブライフも包み隠さず 垂れ流しだ。
とは言っても、YouTuberよろしく 配信するんだけどね。
この辺のことは 今までと大して変わらない。
ただ 遠慮がなくなった。
それに対して寄せられる批判や共感も、変わらずに続く。
見たくないものが多くても、心無い言葉が大挙に押し寄せても、全然気にならない。
僕らには背負うものなど 何一つないのだ。
2人だけが手に入れられたフリーダム。
そして、言い換えれば 外界と会話する 唯一の方法となる。
「よかったでしょ? ぴしんはあれこれ長考して チャンスを逃すところだったよ。あなたのノーンが夫になって 嬉しいでしょ? 」
口をへの字に曲げたシントーは、おーおー その通りだと顎をしゃくる。
「 キット、もうひとつ 注文して欲しい 屋内で使えるアクリル絵の具とリキテックススプレー
」
「絵でも書くの? キャンバスも必要? 」
「ううん キャンバスはここの壁全部だよ。天井も 床も。 」
「 どうして 急に?ここが残っても誰の目にも触れないかもよ。」
「わかんないよ。ぶっ壊れて、壁面が剥き出しになるかも。 」
「 そうなったら 僕らだけじゃなくて 誰もいないさ。」
「ロマンチシズムだよ。最古のイコン画 現る!みたいな 」
僕は一旦 会話を止める。そして周りを見回す。
シントーがイマジナリーな友達と会話してるんじゃないかと思って .....
チップスを頬張り、温めた乾燥肉を切り分け 朝食だよと僕に手招きする。
どうやら 二人暮しは妄想じゃないようだ。
そう思うと可笑しくなった。シントーは真面目に壁画を書くプランを立てたようだ。
「 オーケー じゃあ 大量に注文しなくちゃね。ねえ ぴしん 僕も描いていいんだよね?亀とライオンのイコン。」
「 のっぺりとした動物が寄り添う画になるね」
おはよう 僕のキット。
朝の挨拶までたっぷりと時間を使い、肉にフォークを突き刺すまで、更に長いキス。
今朝は 順当に朝食にありつけるのかな、、、長い長いキス、、、シントーの舌からは起き抜けに飲んだミルクの味がした。
僕だけのミルクメン。優雅に怠惰に 黙示録に記された日々を自由に過ごす。
「 キット、コンドームも追加して、、、、、、足りなくなる。」
そらきた 長いキスの代償だ。
「 大人しく朝食を食べれたら 減らないよ? ぴしん。」
「 今は 二度と訪れない。朝食は後。」
僕を抱き抱え、寝室へと歩く。
パジャマのボタンは既に 3つ外されている
「 生でもいいよ。妊娠しない。」
「 わかんないよ? 僕の子種 育つかも。こんな世の中だ。」
「 原子レベルでおかしいもんね。 だったら 望んでも許されるかな」
「 クリスが望むこと なんでもする。なんでもしよう。二人で出来ること。」