Welcome to the Dawn...
会いたい。
君がひとときだけ見えない 闇が来る前に
星降る夜を共に。。。。。。

「ぴしん、どうしたの? もう 3時になるよ?」
僕は、クリスを呼び出した。
こんな真夜中に 大事な人を。
「テップの夜空を一緒に眺めたかったの。」
「ロマンティックだね、 ぴー。」
少し眠たげで 気だるそうなクリスも魅力的だ。
魅力的って、一言だとそうなるけど、僕にとっては、無限大に愛おしい対象だってこと。
「プルートーとマフィンは眠ってる?」
「うん。でもマフは誰かいないと直ぐに目を覚ますよ。」
優しく撫でて 寝かせつけなくちゃ...
クリスを包み込んで、腕に抱かれたマフィンに良い眠りを。。。。。
「僕の仕事。任せて。」
クリスのシャツの襟を閉じ、肩を抱いて 星空を眺める。
完全に、灯りの落ちることの無い街の景色
それでも、遥か遠い宇宙の星は強い光を放って降り注ぐ。
肩に凭れたクリスからは 愛用のシャンプーの匂いがする。僕も時々 同じ匂いになる。
「綺麗だね..... ぴしん。」
「うん。綺麗だ。いつぶりだろう、、、 こんな風に空を見上げたのは。」
「思い出せないな。」
「僕は 地上の星ばかりに目を奪われてる。夜空なんて見上げないよ。」
「地上の星?」
何それ?とクリスは頭を上げる。
「Khun」
クリスしかいないよ。。。。。
「僕 ?どうして? 同じ星に住んでるのに」
「僕のいちばん近くで輝く星だよ。」
顔を赤らめるクリスを外灯が照らす。
3時29分 夜明けまでもう少し。
「ちゅあん、どうしたの? 恥ずかしいよ…」
「ティーラックも、ラッククンナも どこでも言える機会が少ない。だから 直接キットに言いたいんだよ。」
僕は 歌にする。
抑えられない想いは歌で表す。
詩の時もあるけれど、 ショウの時は、とびきり素敵な愛のうたを選ぶ。
感情の昂りをグッと抑えて、
ただ一人に...クリスだけに響くように。
「クリスは 僕を愛してる?」
手を取って、胸へと引き寄せる。
照れて 目を閉じるクリスにもう一度問う。
「今も変わらない 愛がある?」
真ん丸な瞳がゆらゆらと揺れる。
「ウー....ワー、、、、ポン...」
言わなきゃダメ? 知ってるでしょ?と怒った顔をする。
「キットの言葉で聞きたい、接続語は要らないから。」
僕の右手を自分の胸へ押し当て 真っ赤な顔でハッキリと告げる。
「大好き!」
とても愛してる。。。。。
肩に顔を埋め 甘く低い声で告げる。
The darkest before Dawn
明けない夜はない。
星たちが 今日最期の瞬きを始める。
その場で 輝くもの
墜ちて、海底に沈むもの
庭先に墜ちた星の欠片は 翌日には、一気にスターとなる。
青い空に太陽が登る前 星たちは、月と共に 視界から消える 。
そのほんのひととき 漆黒が地球を包む。
なんにも見えない黒の世界。
手を繋いで、先のビジョンを語ろうか
僕の隣にはきっと 君がいる。
クリスとなら 歩んで行ける。
困難は星の数程 降り注ぐだろう。
それでも、君となら 歩んで行ける。
月並みだけど、確信出来る。
「ぴしんも 言って。僕に好きって。」
「さっき言っただろ。」
「一番星じゃない!人としてどう思ってるか!」
接続詞もちょっと待っても必要ないからと 唇を尖らすクリス。
闇が覆う一瞬まで 君を目に留めたい
「クリスを愛してる。」
大好きだよと言うと うん、と頷く。
「うわ、何、、、、、何も見えない!」
無数に敷きつめられた、星屑のカードを裏返すように、空は、辺りは闇になる。
怖がるクリスを抱き寄せ、唇を重ねる。
僕は ここに居る
見えなくても、感じる事が出来る
ぎゅうっと閉じた瞼を撫でる。
力のこもった腕を摩って、安心を促す。
空と大地の境界線が淡いグリーンに発光する。
「夜明け前がいちばん暗いんだ。」
不安になるくらい 深い夜が訪れる。
しかし どんな夜を過ごしても、必ず 朝はやってくる。
「ぴしん コートー、、、 怖くて 唇噛んじゃったかも....」
「平気 痛くない。 吸われたけど。」
オィ ぴしーん!と怒って 叩く。
「あっ 流れ星! お願いしなくちゃ…」
手を合わせて 空を見上げる。
白みかけた空にまた星と月が現れる。
逃げ遅れた 星達が、慌てて寝床へ戻る途中だ。
「お願い 届いたかな。」
「どんな願いがあるの?」
「ぴしんが、マフィンより 僕を選びますようにって!」
じっとりと視線を向けて 下唇を突き出している。
「それなら もう 叶ってるんじゃない?」
意味がわからず 眉間のシワはさらに刻まれる。
「マフィンを選ぶと、自動的に、プルートーも僕のもの 、、、その親であるクリスも僕のもの。」
「あ。。。。。」
「最初から キットを選んでるの。」
「あー。。。。。」
照れるクリスが愛おしい。
「僕に キット以外の選択肢はないんだよ。」
空はグリーンから淡い赤へ。
まるで、僕らの感情の高ぶりのように、色のゲージが上がっていく。
「今日も暑くなりそうだね。」
「帰って プールで泳がない?」
「うん いいね。 それと、、、、、クリスのベッドでも泳ぎたいなー、、、」
太陽より真っ赤な クリスの顔
手を繋いで走る僕達
残りの星達が 急いで帰るように。
終わり。