9/3まで公開します。

「キット どこでも座って。」
クリスは買ってきたジュースやお菓子を僕に渡し、椅子に座った。
キョロキョロと見回し、僕の片づけ下手に言及する。
「これで ぴーに彼女が居ないことがハッキリしたよ。」
掃除も洗濯物もそのまま
散らかった部屋にノーンを招いた
「コートー 片す暇がなくてさ。」
「いいよ。謝らなくても。押しかけたのは僕だし。」
クリスの部屋はいつも片付いている。
汚い先輩だと思っただろうな。
「ぴーの見た目と反してたから なんか新鮮。」
「苦手なんだ…片づけ。 ゲームでもしてて 足の踏み場を広げるから。」
本棚の前に散らばった本やプリント
脱いだままの衣服
恐らく流し台も… 詮索は止めよう。
ぐちゃぐちゃに乱れたベッドシーツ。
僕はシントーの衣服を手に取る。
本は、並びがあるし、シーツはプライバシーもあるんだろ‥…
「嫌じゃなかったら 片づけ手伝っていい? 手際良いよ あなたのノーンは。」
「いいの…? じゃあ 全部洗濯カゴに放り込んで置いて。」
「オーケー。ゆっくり話聞いてもらいたいからね。さあ 始めよう。」
言うだけあって、クリスは僕の衣類を手際良く畳み かごに収める。いいのに…放り込んでも… 几帳面なんだな 躾の行き届いた子供なんだね。
ジッと見つめていると、クリスは睨む
「ぴー 僕が恋人だったらあなたを怒れる立場だよ。手、動かして!」
怒ってるじゃん。 僕は慌てて、溜まった皿を、とは言っても数枚だが 片っ端から洗う。
「ぴー 本とプリント 分けて隅においておくよ? 」
ふーん カメラの雑誌 英語の小説 異文化カルチャー 本が好きなんだな。
おっと、テスト用紙… あー ぴー、評価は見なかった事にするよ。
次第にカーペットの色が見える。いいすぎだけど、何日も、いや何週間も 部屋を散らかす程 4年生は忙しくなるのだろうか。
その先の進路や、将来のこと 聞いたことなかったな…
「キット はい ジュース飲んで。テーブル拭いたから 座りなよ。」
これ以上 僕の部屋の掃除屋をさせるつもりはない。
クリスの言うとおりだ。僕に彼女が居ない訳は 生活態度にあるんだ。解ってはいるんだけどね、、、後回しにする性格だ。
クリスはテキパキと動き 乾燥機の衣類をハンガーに掛けた。 早い… マメなんだな 実に‥…
羨ましいね きっと彼女は大切にされているだろう。
氷の浮かんだアイスティーをストローで啜っている。 相変わらず部屋をキョロキョロと眺め回しているけどね。
「ぴー、それくらいにして飯食べない?買ってきたからさ。」
「うん。温めるね。」
それにしても、ヘイザーやってる時のシントーとはまるで別人だ。 電子レンジのボタン一つ押すのもゆっくりで、ビニールに入った海老のスープをのろのろと皿にうつす。。。。。
いつになったら 夕食が出てくることか…。
「ぴしん。。。。。作業しながらで良いから 話聞いて。」
何?と焼き飯のパックと格闘しながら返事をする。
このままじゃ 話聞いてもらうの夜明けになる‥…言い過ぎだけど。
「ぴしん、 僕と付き合わない?」
えっ?!と驚いた拍子に 輪ゴムが飛んで宙を舞う。
「だって 待って! キット 彼女いるじゃない。」
「別れた。僕 ぴーにならなんでもしてあげられる。」
「 男だよ? 僕。」
「僕のこと嫌いじゃないよね?」
「嫌いなもんか… 僕のノーンだよ。」
「格上げして。 男とか関係ない 好きなら
関係ない。」
クリス 本気? 同性と付き合うなんて考えた事なかったし。
真っ直ぐに僕を見るクリスが冗談を言ってるようには見えない。
「シントー。料理もある程度出来る 部屋も散らからない。 部屋に来ていいなら 邪魔にならないように面倒みたい。」
レンジの温めボタンが取り消される。
クリスはまた手際良く エビを真ん中にしてスープを運ぶ。
焼き飯はいつの間にか オレンジの光に温められていた。
「シントーならいいよ 尊敬してる。 恋になんてならないのは解ってる いきなりだもんな。 とにかく付き合う‥…ダメ?」
「キット…ぴーでしょ。呼び捨てダメ。」
「付き合うのはオーケー?」
シントーは下を向き、真っ赤になっている。
そうだよな…突然の告白だ。
本来なら 彼女と別れた話を聞いてもらうつもりだった。
こういうの‥…僕の悪い癖かもしれないけどね
唐突で向こう見ずな発言は。
鈍くさい先輩の行動と普段のクールな学生のシントーを見ていたらね 思わず 結論から言ってしまったわけ。
「ん..... いいよ。 でも男でもいいの?」
まあ 普通は引っかかるよな。
「シントーだから。」
「僕は.....初めて会った時から気にしてたよ クリスのこと。」
「じゃあ 今 両想い??ってこと?」
シントーは 百面相しながら 考えを巡らす。
3年間 仲の良い先輩後輩
ヘイザーとして活動も共にし 信頼は築けた。
何に悩むの先輩?
僕とのこれから
ビジョンは見えないよね…
僕もだよ。
つき合うってどういう風に?
今までの距離感でいければ ただの友人だ
「クリスも僕が好き?」
「言ったじゃん シントーが好きだって。」
友人より 弟より もっと遥かに上だ。
「オィ!ぴーでしょ? …僕が好きって言ったらこの瞬間から クリスは彼氏ってこと?」
ホント、、、、コイツ.....
怒らず、、、 焦らずにだ。
「そうだ。ぴしん 僕の恋人になってくれる?」
「うん。 なるよ。」
電子レンジの中で待っている料理をテーブルに運ぶ。
クリスは無言でスプーンとコップを並べる。
「食べよう。 それから、今夜泊まっていい?」
「キット、 恋人になったからって いきなり‥…」
いきなりな展開に頭が追いつかない。
どうなるの 一体僕は‥…
「ぴー なに考えてるの? あ、もしかして期待した?」
何を?何がだよ! 口の減らない弟だ!
「そんなんじゃないよ!」
僕は何も知らない。何も解っていない。
これから知るのだろうか?
思考は迷走状態だ。
「泊まっちゃダメ? 色々知りたい。ぴーのこと。」
「汚い部屋の作り方とか? 別れたくなるかも。」
ハハハ ギャグのつもりか?
僕は、少し緊張している。
さっきまでの熱が落ち着いたからだ
クールじゃないピラワットの暴走は避けたい。
「うん そこも含めて 教えてよ もっとぴーのこと。」
まだ温かいお皿を眺めるシントー
「キット シーツを替えるの手伝ってくれる?」
「いいよ ベッドで寝かせてくれるなら。」
うんと頷いて また皿に視線を落とす。
「それから‥… 海老の殻 剥いてくれる?」
恐らく僕は耳まで真っ赤だ。
男が可愛いと思う自分がいる不可思議
うん いいよ。と海老を手に取る。
この可愛い先輩の為ならなんでもするよ。
定かじゃないけれど、
この時誓ったんだ。
僕らはこの先 ずっと一緒だと。
※シントーでっかい海老は苦手だけど、買ってきたクリスの為に食っちゃう優しさ
※初夜書くか書くまいか