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OLIVE

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「兄さん 課題?」

僕の家まで来て 僕の部屋のみライティングデスクでラップトップを持ち込み 軽快にキーボードを弾いている。

「うん これ終わったら ゲーム出来るから。」

いつになることやら.....

夕飯を終えて、シントーを部屋に通し、僕はポーに頼まれた事をやるため 階下へ残った。

大荷物の中身はPCに教科書か

弟の家に泊まるくらいなら

下着とパジャマだけでいいのに

「チュアン 僕 セットアップして待ってるな」

母が持たせた ソーダ水と果物 それと 小さな小鉢にグリーンのオリーブ

ピックに刺して、兄さんの唇を突く

「ン オリーブ? コップンナ」

兄さんは口をすぼめて、オリーブを吸い込む

僕も、オリーブを突き刺し 口に運ぶ

塩気を帯びたオリーブが 暑い夜に爽やかだ

エアコンは効いているけど 日中浴びた太陽の熱は体に残っている。

「チュアン 僕眠ってしまうかも.....」

精一杯 課題遂行に抗議する。

「なあ クリス 知ってる? オリーブの由来」

兄さんは顔だけこっちに向け、口を少しだけ開ける

果物? オリーブ?

話の流れからオリーブを所望しているのだろうか

星型のピックに刺し 兄さんの口へと運ぶ。

僕を見据えたシントーの目に動揺しながら... 戸惑ったのは 少しだけね、、、オリーブが兄さんの口の中へ消えるのを見ていた。

「知らない オイルが採れるってことくらい」

キリがついたのか カチャカチャと素早く 終了動作をし ラップトップを閉じる。

「オリーブの実はね、ギリシャ神話にも出てくるんだけど 女神アテナが作ったって言われてて、花には、平和と知恵の花言葉があるんだ」

正直 それがどうしたの?って思うんだけど

兄さんは、スマホを手に 僕の隣に座る

トレーをネストテーブルごとベッドに引き寄せ オリーブを1つ摘み 僕の唇に押し当てる

「ン...チュアン 僕 もういらないよ…」

「あと一つだけ オリーブの香りにはね、安らぎを与える効果もあるんだよ」

オリーブをグッと押し込むから兄さんの指ごと 食べてしまう

「チュアン 指抜いて.....」

「鼻に抜ける香りを嗅いでみて」

無理だよ

そんな余裕ない

それでも僕は目を閉じて、 兄さんがいうように一心に鼻から吸い込む

「どう 安らぐ?」

解んないよ

こんな状況で.....

兄さんは、戸惑いを隠せない僕の顔をひと撫でして やっと指を抜く。

「.....香りは解んない でも今やっと安らいでる!」

怒った顔をあからさまにシントーへ向ける

「ゲームする?安らいでるとこ悪いけど。それとも フルーツ食べながら、ゆっくりする?」

疲れてるんだろうな

やんわりとゲーム以外のことを提案している

優しい兄さん

「ゆっくりするでいいよ。その代わり 僕が飽きてゲーム初めても、寝落ちないように隣にいてよ」

兄さんはニッコリ微笑み 膝をポンポンと叩いて 僕を誘う。

勿体ないからね 二人きりの時間 眠ってちゃあね。

膝に頭を乗せて、一息つき 兄さんの顔を見上げる。

端正な顔は 優しい笑みを湛えたまま

安心感

僕にとっては 香りとかで得られるものじゃない

シントーの傍に居る

それだけで 安らぐんだ

続く。












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